ama-oto
 駅へ向かいながら、他愛もない世間話に花を咲かせた。誰のレポートが面倒だの、抄読会の時の突っ込みが的確すぎてドギマギするだの、本当にどうでもいい話をしながら、ちらちらと福間くんの表情をうかがった。けれども、特に変わった様子もなく、あっという間にもうすぐ駅というところまで来た。

 「ところでさ、豊崎さん。」
 「ん?」
 「今週さ、すっげーやけたわ。」

 その言葉を突然言われて、よく分からなかった。

やけたって、何が「やけた」んだ。何かを「焼く」というわけじゃないだろうから、「妬けた」だろうか。ちょっと待て、何で妬けるのか、意味が分からない。

眉間にしわの寄った表情を見て、すたすた歩いていた福間くんが歩みを止めた。

 「どう取るかは、自由だけど。」
 「なにそれ。」
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