ama-oto
 「謝礼。」
 「別に来週でいいよ。」
 「お腹空かない?」
 「特に。」
 「そっか。」

 何やら腹に一つ抱えてるような、そんな顔をしている。他の大学からうちの大学院に来た福間くんとは、あまり話していないし、よく知らない。いったい何を考えているのか、よく分からない。世間話程度の関係の人間に、しつこくされるのもちょっと困る。

 「じゃ、来週ね。お昼でもおごって。」
 「リョーカイ。」

 福間くんに手を振って駅へ向かおうとした。2分後、意外な言葉で呼び止められるまで。

 「それでいいのか?」

 何に対する「それでいいのか」だかは不明だが、なぜか心臓が跳ねるぐらいドキリとした。振り向くと、腕を組んだ福間くんが真っすぐに私を見ていた。心を射抜くようなまっすぐな視線。
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