ama-oto
 まさかとは思うが、と前置きをして、清人には何も言わず、大学院の同期と2人きりでランチをしたことを白状した。知香が眉間に大きなしわを作った。

 「いや、そんなぶさいくしわ作んないで」
 「バカか?ねえ、自分がされたら嫌じゃないの?」
 「別に、本気だって後で言われるまでは大して…」
 「バカ?ねえ、菜月、バカなの?」
 「そんなに怒ることなの?」

 異性と2人きりというのは、学食とかであれば、別段不思議ではない。そうなることが時折あることを清人は知っているし、たまたまそんな状況だった時に清人が友だちと食堂に来て、後日見かけたことを言われたりしたことだってあった。それについてこれと言って厳しく「勘違いするからやめろ」だの、止めるよう言われたことは一度もない。

 ただ、外となると疑われかねないなという気持ちは、私の中に少しあった。だから、というか、なんというか。清人から要らぬ疑惑を持たれたくなくて、大学周辺を避けた。お互い午後が空いたからというのもあって、二駅先の回転寿司屋に入った。清人は2限~4限が授業でずっと大学にいるはずだし、清人の最寄駅とは逆方向で、かつ大学から二駅先だ。清人の最寄駅からは5駅離れた場所だ。
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