ama-oto
 「それでいいのか、女子って?」
 「何が?」

 できる限り熱を込めずに答えた。意味不明な問いかけに、収まりかけた罪悪感と腹立たしい気持ちが同時に押し寄せた。でもコイツの言う「それでいいのか」が分かっていないのに、怒って取り乱すのもみっともない。

 ただ、返ってきた答えは、至極まっとうで、怒った私がバカだった。

 「まー、授業がだいたい一緒だし、担当教授が一緒だから、問題ないだろうけど。」
 「はい?」
 「いやだったら構わないけど、一応連絡先教えて。」

謝礼ランチの相談と、今後文献とか教えてほしいことがあった時とか相談のってほしいという福間くんの希望から、連絡先を交換することにした。お礼されるほどのことはしてないし、役に立てるか分からないけれども。

「じゃ、また来週。」

福間くんと別れて、駅へ向かった。
 
 小さなとげが刺さったような、よく分からない気持ちのまま、電車に揺られて帰宅した。今まできちんと話したこともない人物の些細な言葉で、こんなに揺さぶられるとは思いもしなかった。
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