ama-oto
 「あったあった。」
 「え?どれ?」

 一瞬のことだった。

 「スキアリ」

 耳まで赤くなるのが分かった。恥ずかしくて、清人の腕をバシッと叩いて、軽くにらんだ。それを見て、清人がクスクス笑った。

 「菜月、かわいい。」
 「…なにも出ないよ。」

 もう一度清人の腕をバシッと叩いた。

 「いらない。レンタルカード以外。」

 お互い顔を見合せて笑った。

 まさかだった。DVDを持って、立ちあがったタイミングで、軽くだけれども、キスされた。

 数分前のやりとりが気になって、店内をきょろきょろしたが、仕事中の福間くんを見つけることはできなかった。たぶん、やりとりのあった棚からは離れているし、逆方向にでも行ったんだろう。清人が私にキスした瞬間を、見つけられてなかったようで、心底ほっとした。

 レジでレンタル処理をしてもらい、店を出た。

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