ama-oto
13
 日曜日の午後、清人がバイトに出たあとから、私の追い込みが始まった。担当する抄読会に向けて、火曜日までは集中を切らしてはいけないという、妙なスイッチが入った。

金曜日にある程度詰めてあったから、文献とノートをもう一度見直して、配布するレジュメを作って、周辺の論文を再度検索したり、読みこんだり、寝食を忘れて準備に没頭した。

 そんなに気合い入れなくても大丈夫なのだが、本当に妙なスイッチが入ってしまった。むさぼるように文献を読みに読んだ。並行してやらねばならないが、期限がそんなに迫っていないものも、いつも以上にガツガツ進めた。修論の準備、たぶんレポート作成課題が出るであろう授業の準備、そのほかのアレコレ。アドレナリンが出まくった3日間を過ごした。ただ、その分といってはおかしいが、休み時間や授業中に船をこぎまくってしまった。

 たぶん、いや、確実に、福間くんに話しかけられたくない気持ちも働いていたからかもしれない。ほかの人ならいいけど、福間くんとはできるだけ、世間話とか当たり障りのない話さえもしたくなかった。変な地雷を踏まないことは分かっていた。けれども、ともかく口を聞きたくない気持ちが強く働いた。今、変なことを言ったら殺すぞ、ぐらいのオーラが出ていたような気もする。

 「終わった…」
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