ama-oto
 押し問答の後、キッチンに立ちながら、ふと気がついた。心の隅にある、見ないフリしているもの。

 なぜ、ここ最近の清人は、やたらと甘いモードにあるのか。

 今までは、そんなに甘い言葉とか、甘い雰囲気とか、あったけれども、こんなに色濃くなかった気がする。視線の先の清人は、まだまぶたに眠気が残ったような顔をして、テレビを見ていた。

 私の頭の中は、目が覚める直前の夢の延長戦状態にあるらしい。話していた相手は、よく分からないけれども、こんなことを投げてくるとしたら、一人しかいない。ただ、その一人とは、ここ最近そんな会話をしていないのだけれども。

 自分の「自爆するほどぐるぐる考える」性格が嫌になった。信じようと決めたくせに、ふとしたことで心の奥の奥が揺らいでいる。

 トースターがチンとなって、パンが焼けるのを知らせた。かぶりを振って、邪魔な考えを追い払った。
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