ama-oto
 さっき読んでいた文献の近くの書架に来たとき、福間くんの姿に気がついた。さっき教室で別れたのだけれども、先に図書館に来ていたらしい。

 「あれ?まだいたんだ。」
 「あ、来たんだ。」

 本に落していた視線を、こちらに向けた福間くんが、なんとなく違和感のある言葉を投げかけて来た。

 「来たら、まずかった?」

 少しイラっとしながら答えると、福間くんは本に貼っていた1枚の付箋を、すっとページからはがした。

 「見覚えのある字だったから。」

 それはまごう事なき、探していた付箋だった。

 「ついてなかった?」

 福間くんはニヤッと笑いながらそういった。

 「ありがとう。なんか、今日は1日あれこれついてなかった。」
 「ついでだから、俺もそれ、ちょっと目を通しておきたい。」

 所蔵がある雑誌の記事だったのもあり、雑誌フロアへ向かい、該当の記事のコピーを取り、図書館を出た。

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