ama-oto
 相変わらず梅雨時の雨が、アスファルトを濡らしていた。とりあえず駅まで一緒に行くことにして、傘を差し、歩き始めた。いつも通り、当たり障りのない世間話をしながら、何事もない駅までの道を歩いていく、お互いそれだけのつもりだった。

 校門を出てすぐの信号を渡り終える直前、隣の福間くんの歩く速度が急激に減速した。その先にある喫茶店の軒下で、一人の女性が誰かを待っているようだった。薄紫の花柄の傘を差し、私より少し低い身長のその女性は、少しきょろきょろしながら誰かを探しているようだった。

 「ゆかり・・・?」

 きょろきょろする女性がこちらの方を向いたとき、私の足は泥にはまったかのように動かなくなった。

 「え?福間さん?」

 その言葉に、なぜか安堵する自分と、なぜ福間くんを知っているのかという疑問と、もしやという気持ちとがぐるぐると渦巻き、どろどろのマーブル模様が頭の中に広がった。
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