ama-oto
16
 その二人の間には、親密さとはまた別の、何か違うの色合いのものを感じた。

 「いつぶりかな?」
 「半年ぐらいかな?」

 2人の会話を、ぼんやりしていく頭で何となく聞きとりながら、動かなくなった自分の足の感覚を取り戻そうと必死になっていた。

 「かのじょ…さん?」
 「違う。」

 柔らかながらもきっぱりとした口調で、次の言葉を遮っていた。

 「ごめん、ゼミの教授と飲む約束があるんだ。じゃ、また。」

 福間くんはそう言うと、私の腕をつかみ、ずんずんと歩き始めた。引っ張られたおかげで、私の足はようやっと、見えないぬかるみから抜け出すことができた。

 「まだ使ってるんだね、その傘。」

 その言葉に、一瞬振り返りそうになりながらも、福間くんは前を見て答えた。

 「ああ、そうだな。壊れてないものを捨てる理由がないから。」

 そう言うと、振り返ることなく前へ前へと歩を進めた。その間、私は何も言葉が出なかった。出なかったというか、出す言葉が見つからなかった。
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