ama-oto
 「いや、そういうことじゃなくって。
  ひとつの色ではない、いろんな色があって、
  ただただ、苦かったり甘かったりだけじゃないってこと。」
 「そんな風に言われたことないな。」
 「そう?」
 「とりあえず…ほめても何も出ないよ。」

 顔を見合せて、がははと笑った。

 「元カノは……どんな人だったの?」
 「直球来たな。うーん……。」

 ふと、心の中で浮かぶことをはさみながら、笑い飛ばしながら、あれこれ話した。お酒の力もあって、その日のついてなさや、小1時間前の忘れたい情景が、すーっと頭の外に流されていった。

 気持ちもお腹も満たされて、アルコールでいい気分にもなったところで帰ることにした。それなり飲み食いしたのもあって、おごりという言葉が申し訳なくなった。伝票を持って立った福間くんに声をかけた。
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