ama-oto
 「あのさ…払うよ、割り勘にしようよ。」
 「いや、おごる。」
 「バイトもがっちりしていて、そんな余裕あるの?」
 「いや…今日はおごり。」

 きっぱりした口調の言葉に、出していた財布の口を閉めた。

 外に出ると、ずっと降っていた雨が止んでいた。

 「ごちそうさまです。」
 「今日は傘忘れんなよ。」
 「そうだね。」

 酔っぱらって少し千鳥足の福間くんに合わせて、のろのろと駅へ向かった。明日もまだ平日だというのに、駅前には同じような千鳥足のサラリーマンがうじゃうじゃと歩いていた。

 「本当はさ…」
 「ん?」
 「豊崎さんがちょっとつぶれるぐらいの方がいいって思ってた。」
 「なんで?」
 「なにも考えずに、帰ってすーっと寝ちゃう方が、楽かなって。」

< 97 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop