恐怖短編集
「車内の見回りを、強化してくれたよ」
無理矢理笑みを作り、声を絞り出す。
嘘ではない。本当に、ラッシュ時の車両を頻繁に見回ってくれるようになり、私を見かけると笑顔で会釈をしてくれたりしている。
「それでも、つかまらないんだぁ」
残念そうに天井を仰いで言い、
「相当なやり手だね」
と、付け加えた。
「そうだね」
私の声は風の音で消えるほどに小さくなる。
おかしいよね?
見回りを強化してくれたんだよ?
私は毎日七時十五分から七時四十五分まで、ずっとチカンにあってるんだよ?
毎日毎日、見ているはずなんだ。
私がチカンに合っているその瞬間を、見ているはずなんだ……。
無理矢理笑みを作り、声を絞り出す。
嘘ではない。本当に、ラッシュ時の車両を頻繁に見回ってくれるようになり、私を見かけると笑顔で会釈をしてくれたりしている。
「それでも、つかまらないんだぁ」
残念そうに天井を仰いで言い、
「相当なやり手だね」
と、付け加えた。
「そうだね」
私の声は風の音で消えるほどに小さくなる。
おかしいよね?
見回りを強化してくれたんだよ?
私は毎日七時十五分から七時四十五分まで、ずっとチカンにあってるんだよ?
毎日毎日、見ているはずなんだ。
私がチカンに合っているその瞬間を、見ているはずなんだ……。