*嘘月とオオカミ先輩*
不毛と分かっていても
「ハルカちょっと、首!」
講義が終わった後の廊下で、エリがあたしの背中を叩いた。
「え、何?」
「首の横のとこ、付いてるよ」
呆れたような表情で綺麗に巻いた茶髪を払い、自分の首を指してみせる。
「キスマーク」
「えっ」
慌てて鞄から鏡を取り出した。
エリに教えてもらいながら自分でその印を確認する。
右耳の下の方、襟に隠れるか隠れないかのところに、赤い花びらが浮かんでる。
「うわ……」