*嘘月とオオカミ先輩*
戸惑いを隠せず
陽が落ちると虫の声が響き始める。
蒸し暑さが嘘のように薄れて、もうすっかり秋の気配が漂っていた。
月島に"別れ"を切り出されてから1週間。
彼女はサークルには来るけど、その後の打ち上げには顔を出さずに帰ってるようだった。
今日もテニス中に話す機会を得られないまま居酒屋に移動し、気付くと月島の姿は消えていた。
「ミドリちゃん、ツッキーは?」
月島と仲のいい緑川にさりげなく訊ねる。
と、彼女は少し困ったように笑った。