*嘘月とオオカミ先輩*
「今日、サークル来なかったから……」
それだけのことで……わざわざ家まで?
この時間にここにいるってことは、先輩は多分、打ち上げの飲み会に参加してない。
先輩がサークルの打ち上げに行かないなんて、めったにないことなのに。
どうして、そこまでして――
「なん」
「え、なに、知り合い?」
あたしの言葉にかぶさって声が落ちる。
正面に立った先輩と隣のあたしを見比べて、コウキはきょとんとしていた。
そんなコウキを一瞥し先輩はあたしに視線を戻す。
その目が繋がれた手に向けられた気がして、慌ててコウキから手を離した。