*嘘月とオオカミ先輩*
休憩中、コートから出てボールが飛んでいってしまった茂みの方に探しに行った。
テニスは18時スタートだったから、もう日が落ちて、薄闇にぽっかり月が浮かんでる。
その月明かりを頼りに、ガサガサと近くの茂みを掻き分けた。
どこに行っちゃったかな。
満月みたいな黄色いボールを探しながら、人知れず溜息が零れ落ちた。
サークルが始まって5ヶ月。
未だに柵越えしてるのなんて、あたしくらいだ。
野球なら喜ばしいところだけど、テニスじゃお話にならない。
「センスないんだよなぁやっぱり」
「え? 扇子?」
独り言に返事が返ってきて、あたしは慌てて振り返った。