*嘘月とオオカミ先輩*
あさましいが故に
最初に危機感を覚えたのは、10月のサークル打ち上げ飲みでのことだった。
「なーなー、ツッキーって最近よくね?」
座敷の奥側、3年の男連中が固まったテーブルの話題。
唐突に出てきた名前にオレは飲んでいたビールを吹き出しそうになった。
「あ、俺もそれ思った。なんか変わったよなーあの子。垢抜けたっつーか、柔らかくなったっつーか、柔らかそうっつーか」
「だよなー」
「そうそう」とか、「あーそれ分かる」などと頷いてる奴らの中で、オレは妙な発言をした隣の三條(さんじょう)を睨みつけた。
「オイ、柔らかそうってなんだよ」