*嘘月とオオカミ先輩*


「どうしたんですか、急に」


小さな子供を宥めるように優しく微笑む彼女の手を、強く握り締める。

真剣な表情で、真剣な言葉を口にしようと目に力を込める。


けれど、結局オレの視線は下がってしまい、彼女の顔をまっすぐに見つめられない。


「本気で、元カノなんかどうでもよくて、ハルカちゃんが好きだよ」



本当の言葉なのに、


なんで彼女をまっすぐ見られないんだ。



「ハルカちゃんが、好きだよ」



本気の想いなのに、


口にすると嘘臭く聞こえてもどかしい。


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