*嘘月とオオカミ先輩*
「先輩」
駅からずっと黙ったままのサクヤ先輩。
街灯に照らされたその表情は、どこか哀しげだ。
「あの、すみませんでした。さっき」
今日、サークルのときにコート裏で先輩を突き飛ばしてしまった。
咄嗟のこととはいえ、やりすぎてしまったかなと反省してる。
怪我をしてた可能性もあるし、なにより先輩の表情があれ以来ずっと曇ってる。
「ごめんなさい」
あたしの謝罪に、先輩は前を向いたまま小さく答えた。