*嘘月とオオカミ先輩*



まるでこれから何の話をされるのか、きちんと理解している賢い番犬みたいだ。

聡明さを哀しげな瞳に映して、先輩は静かにあたしの言葉を待つ。



「あの、サークルのときは、ああいうの絶対ダメです」

「……キスのこと? それとも2人でコート裏に行ったこと?」

「どっちもです」



強く言い放つあたしに、先輩は開いていた口を結ぶ。



「サークルではバレないようになるべく距離とって……接触しない方向でいきましょう」



言い切ると、先輩はしばらく黙って、そして頷いた。



「……うん」



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