*嘘月とオオカミ先輩*
顔を上げると、嬉しそうに笑う三條先輩が目に入った。
そのまま先輩は他人の噂話をする気安さで言葉を続ける。
「ナナミのやつ、結構長く想ってんじゃないかな。1年の頃からだから。ほら、サクヤに彼女がいたからさ。ずっと告白できなかったらしいよ」
心臓が、バクンと大きく跳ねた。
サクヤ先輩に彼女がいるって思ってたから、ナナミ先輩は告白できなかった……。
彼女がいるにもかかわらず、サクヤ先輩に近づいたあたし。
「ん? どうかしたのツッキー」
三條先輩の声が耳元を素通りしていく。