*嘘月とオオカミ先輩*
「あたしが三條先輩と、話、ですか?」
質問を繰り返してから首をかしげると、先輩はだるそうに頭を回した。
「帰り道で、なんかコソコソ耳打ちしてたじゃん」
心臓がひとつ音を立てる。
暗い通りの真ん中で、三條先輩が囁いてきたのはナナミさんのことだ。
ナナミさんが、サクヤ先輩を好きだって……。
頭に思い浮かんだ言葉を必死に追いやる。
こんなこと、先輩に言えるわけない。
もし言ったら、先輩がナナミさんのことを意識し始めちゃうかもしれない。