*嘘月とオオカミ先輩*




「どうかした?」 

「い、いえ。別に」 



先輩は眉を下げて不審げにあたしを見つめる。

不安を顔に出さないように、あたしは必死に口角を上げた。



「別に、大したことは話してないですよ。適当に世間話してただけで——」
 


芯のない曖昧な言葉では、先輩の表情を曇らせるだけだった。



「本当に――?」
 


先輩の声に被さるように、



「ハルカ、お待たせ」 



傍らからエリの声が響いた。


 
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