*嘘月とオオカミ先輩*
「す、すいません。今日はこれから友達の家に行くことになってるから、私はここで」
咄嗟に考えた言い訳をして、三條先輩を見上げた。
と、疑う様子もなく彼は驚いた顔をする。
「えー? こんな時間から?」
「はい、ちょっと悩んでるみたいなんで。相談乗ってほしいって言われてて」
「そうなんか。じゃ、しゃーない。んじゃ、気をつけてな」
笑顔のままそう言うと、茶髪の武士は短いポニーテールを揺らしながら改札をくぐっていった。
それを見送ってホッと息をつく。
背中には触れられた手の感触がまだ残っていた。
三條先輩は悪い人じゃないけれど、スキンシップが多くてたまにドキッとする。