*嘘月とオオカミ先輩*



「ど、どうしたのハルカちゃん。誰かにいじめられた!?」
 


普段なら笑ってしまうような先輩の焦り口調に、今は首を振ることしかできない。



そして、




「こわ…かった」
 




ようやくそれだけ呟いた。
 



それでも当然ながら先輩には何も伝わらず、



「え、何が? こわい人に絡まれた?」



愛しい人はただおろおろするばかり。
 

あたしはただ首を振って、先輩のジャケットをぎゅっと掴んだ。


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