*嘘月とオオカミ先輩*

 優しさにつつまれる


 
枝の葉が落ち風が冷たくなるほどに、空気は澄みわたっていく。 
 
さっきまで鮮やかだった茜色の空も、あっという間に群青に染め抜かれた。



「ツッキー?」
 


正面でラケットを構えたミドリちゃんに声を掛けられ、慌てて顔を向ける。



「どうかした?」

「ううん、ごめん、なんでもない」
 


そう笑って、あたしは持っていたボールを地面にバウンドさせ、浮かび上がったところをラケットで打ちつけた。



「あっ」
 


変に力んでしまったせいか、ボールは弧を描きながらフェンスを越え、薄闇の中に溶けていく。



「ご、ごめん。拾ってくるね」

「あ、うん」
 


ラケットを足元に置いて走り出したとき、ちょうど後方で休憩時間を知らせるリーダーの太い声が響いた。


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