*嘘月とオオカミ先輩*
ああやっぱり。
少し硬質なイメージの先輩の匂いに包まれて、こわばっていたあたしの体は緩んでいく。
心穏やかになれる温度と匂い。
こうやって大きな手に撫でてもらうだけで、頭の中でこんがらがっていた不安要素がすべてほどけていくような気がする。
「先輩は……こんなとこで何してたんですか」
大きな体に抱きついたままこぼした声は、テニスウェアに吸い込まれてくぐもった音に変わる。
「オレは……」
しばしの沈黙。
言いかけたまま言葉を続けない先輩の顔を見上げた。