*嘘月とオオカミ先輩*
「え……?」
テーブルにうつぶせた状態のまま見上げられて、あたしは硬直してしまった。
男のくせに、そんな上目遣いするなんてずるい。
あたしの気持ちなんか知らずに、先輩は瞳を潤ませる。
「もしかしてさっきの居酒屋で……聞いてた? こっちの話」
――彼女の話のことだ。
窺うような目に、心臓が忙しなく動き出す。
まずい。
「き、聞こえましたけど……でも、なんでそれであたしが怒るんですか」