*嘘月とオオカミ先輩*
「なんだよそれ……。まじかよくそっ」
ざわつき始めるフロアの中、サクヤ先輩の正面に座った三條先輩が悔しげに呟いた。
「まーそう落ち込むなって」
左側に座っていた金髪の友坂先輩がうな垂れる三條先輩の肩を強く叩く。
と、不意打ちのようにあたしが最も恐れている高い声が頭上から落ちてきた。
「そうそう。あたしは半分気づいてたしぃ?」
振り返ると、真後ろで仁王立ちしていたナナミさんと目が合った。
すでにお酒が入ってるらしく、その顔はほんのり赤く染まっている。
切れ長の目にまっすぐ見下ろされ、あたしは射抜かれたように動けなくなった。
「七海……」
サクヤ先輩の声が不安げに宙を舞う。
と、
風に舞う木の葉のようにさらりと声が落ちてくる。