*嘘月とオオカミ先輩*
「まぁ、モトカノよりまともな子で良かったねって感じ」
口元に弧を描き、寂しげな表情で微笑んでナナミさんは三條先輩の隣に腰を下ろした。
「ナナミ…先輩」
思いがけない言葉に、胸の中のわだかまりが薄れていく。
他の先輩方も、サクヤ先輩が説明するとそれ以上突っ込んでくる人はいなかった。
あたしが思っていたよりも、ずっと簡単なことだったのかもしれない。
初めから秘密にする必要なんかなかったのかも、と思うくらい和やかなムードに包まれている。
「おめでとう」とか「俺たち無神経でごめんなツッキー」なんて言葉までかけられて、あたしは黙ったまま首を振った。
こちらこそ、ずっと騙すような真似をしてすみませんでした。
口にする勇気はなく、ただただ心の中だけで呟く。
けれど、まだ納得のいっていない先輩が1人。