*嘘月とオオカミ先輩*
小さな可能性に
「先輩がハルカを好きっていう可能性はないわけ?」
大講堂の席に埋もれて、エリがぼそっと呟いた。
スピーカーから零れる教授の声にすぐ掻き消されたそれは、あたしの頭では強烈に繰り返される。
「ま、まさか。あるわけな――」
エリの思わぬ発言に声が震える。
「なんで? だって彼女とはほとんど会えないのに、ハルカとはしっかり会ってんでしょ」
「そうだけど、でも彼女は家が遠いから……」
「そんならハルカと体力使うより、彼女に会いに行く方に体力使えっつー話じゃん。それか、よっぽどあんたとのカラダの相性がい――」
わーッ!
淡々と言葉を発するエリの唇を慌てて押さえた。