*嘘月とオオカミ先輩*
「ば、場所を考えてよ」
ここは大講堂でしかも講義中だ。
力任せに押さえつけたあたしの手を窮屈そうに外し、エリはため息をついた。
「どーせ誰も聞いてないって」
「とにかく、へ、変なこと言わないで」
酔っ払って彼女の話を沢山する先輩の顔が思い浮かんだ。
あんなに彼女のことを好きな先輩が、あたしを……なんて、ありえない。
「あたしはただ可能性の話をしただけですけどね」
ぼそりと呟かれたエリの言葉が、耳の内側に貼りついた。