*嘘月とオオカミ先輩*


もしかして先輩があんなにたくさんお酒を飲むのは、アルコールの力で彼女への罪悪感を消したいからかもしれない。

少し離れた場所に住む彼女とはなかなか会えないから、代わりにあたしをつかって……。


そんなことを考え始めたらキリがない。


だから、ベッドの上では思考を停止する。

ただ単に、目の前にある体温にしがみつく。


お酒の匂いと先輩の温度と白いシーツに身体を沈めて、襲いくる波に身を任せればいい。


その温もりは愛しさが混じった心地よい波。


流されながら、あたしは密かに好きですと呟く。

先輩に聞こえないように、胸に閉じ込めるように。


< 6 / 382 >

この作品をシェア

pagetop