*嘘月とオオカミ先輩*
怪しい色のネオンから逃げるように走った。
後ろから追いかけてくるのは真ん丸い月。
それはもう空高くに昇っていて、あざ笑うようにあたしを見下ろしてる。
頬を伝う涙が、ポタポタと道路に痕をつけていった。
背中で揺れるラケットの重みが、イヤでも先輩を思い出させる。
「うっ……」
嗚咽になって口から零れる、抑えきれない想い。
「先輩……」
よろけながら立ち止まってつい振り返る。
ボロボロと零れる涙で、月が滲んで見えた。