*ミーくんの好きなひと*
「どうせ萌には、フラれる人間の気持ちなんて分かんないでしょ!」
ノゾミの黒髪が、風に揺れた。
この場所からは、秋晴れの空と色づいた木々を同時に見下ろせる。
再び向き直る彼女の背中を見つめたまま、私はずるずるとドアをずり落ちた。
空気に冷やされた踊り場にぺたんと座り込む。
視界の空が広がる。
「もう、全部どうでもいいって感じ」
その声には、我ながら覇気というものがなかった。
「魂が抜けたっていうかさ……」
私のつぶやきに、ノゾミが驚いた表情で振り返る。