*ミーくんの好きなひと*
人がまばらな教室の廊下側。
後ろから3番目の席にかばんを置くと、
「あ、そういえば昨日のデートはどうだったの?」
白々しくそんなことを聞いてくる。
「もう最高」
声高に答えると、彼女たちは曖昧に笑って顔を見合わせた。
「誕生日プレゼント、何もらったぁ?」
舌足らずなマキににんまり笑ってみせる。
「なんにも」
「えっ、なにそれ!」
「ありえない! 普通、指輪とかさぁ」
「だってミーくん、育ちが良さそうに見えてビンボーなんだもん」
あの木造アパートって築何十年なんだろう。
ミーくんがあの家に住んでるって、最初は私も信じられなかった。
2人が疑わしげに見てることに気づき、私はなおも声量を上げる。