*ミーくんの好きなひと*


見上げると、コンクリートの屋根に人が座ってる。
 
足をぶらぶら揺らしたその顔は逆光で分かりづらいけど、


「も、森川君!」
 

部員の1人が叫ぶと、たちまち周囲がざわついた。



「な、なんでそんなとこに」
 

リーダーの女が言うと、森川は微かに笑みを浮かべる。


「朝練サボって、ここで昼寝…じゃなくて朝寝、してた。…ほら、俺レギュラー外されたからさぁ」
 

その言葉に、私を囲んでいた女たちが気まずそうな表情を浮かべて後ずさりをする。


「で、それ。俺のためにしてくれてんの?」
 

シャツをかき合せた私には目をくれず、森川はつぶやいた。


「そ……や、ちが、……えと」
 

逃げ腰のまま、必死に弁解しようとするリーダーの女。
 
そんな彼女に、彼は倉庫の上から微笑んだ。


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