*ミーくんの好きなひと*


「別に、俺がレギュラー外されたの、西野さんのせいじゃないし」 

「当然でしょ」
 


即答すると、彫りの深い顔が振り向いた。
 
無言でいる私を悲しげな目で見つめて、校舎の方へ足を踏み出す。
 

けれど数歩行ったところで止まり、ためらうように振り返った。


「……行かないの? SHR、始まる……」
 

お人好しにもそんなことを言う。


だって立てないんだもん。
 

ボロボロの私を見て、森川の顔色が変わった。


「まさかどっか、怪我した!?」
 

駆け寄ってくると、大きな体を折りたたむようにして屈みこむ。


「け、怪我なんてしてないから、行きなよ」

「けど、あ、血」
 

いつの間にか、膝頭に赤い血が滲んでいた。
 
さっき暴れたときに擦りむいたらしい。


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