*ミーくんの好きなひと*


「君、かわいーね」
 

肩越しに話しかけてきたのは、見るからに怪しいスーツ姿の男だった。
 
夜が染み出した繁華街は、行き交う人でひどい混雑だ。


「すっごく割のいいバイトあるんだけど、しない?」
 

ミーくんと並んで歩いていたはずなのに、1人だと思われたのか、男はしつこく声をかけてくる。


「君ならびっくりするくらい稼げるよ」

「興味ないから」
 

突っぱねてるのに、男は強引に腕を掴んで私を立ち止まらせた。


「じゃあさ、純粋に遊ばない? おごるからさー」

「だから、あたし今――」
 

デート中だと言いかけて、言葉を切る。
 
愛しい彼氏の背中は数メートル先を歩いていた。
 
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