*ミーくんの好きなひと*
引きずられながら、心臓は激しく脈打っていた。
きつく掴まれた腕は痛いくらいだ。
見上げた端正な顔は、まっすぐ口を結んで、ただ前を見据えてる。
歩くごとに心は静まっていくけれど、行き場のない感情は胸に留まったまま。
「……痛いよ……」
掴まれた腕も、擦り切れた心も。
切なくて千切れそうだよ。
ミーくんは黙っていた。
まっすぐ道を引き返して、私の家に向かってる。
その足取りには憤りが滲んでいた。
私の方が、怒ってるのに。
「……ミーくん」
返事はないけど、
「あたし、モテるんだよ」
黒いアスファルトを見つめながらつぶやく。
と、
「……知ってる」
歩調を変えないまま、ミーくんは答えた。
それだけで、胸の傷がねじれたように痛む。