*ミーくんの好きなひと*
「何でって、普通に駅使ってるだけなんだけど」
そう言いつつ、さりげなく隣を歩いてるし。
「部活は?」
「今日は休み」
興味なさそうに呟くと、案内用紙に目を戻す。
怪我して最後の大会に出られないというのに、ずいぶんのん気だ。
「俺、どこの模試を受けるか悩んでんだよね」
受験勉強に専念してる生徒たちに比べれば、遅れをとってる部活組の彼は焦りがあるのかもれない。
私はどっちでもないけれど。
「西野さんはここのやつ、受けないんだ?」
森川が用紙を振ると、薄っぺらい標語がちらちらと視界をかすめる。
「……その言葉が気に入らないから」
用紙の上側にでかでかと表記された文言を見て、森川は「あー」とうなずいた。