*ミーくんの好きなひと*
「確かに、頑張れば夢が叶うなんて大嘘だよなー」
あれ、と思った。
爽やかスポーツマンの彼なら、『頑張る』とか『夢』とかって言葉が大好きだろうと思ったから。
「夢が叶う、なんてのは、ごく一部の限られた人間だけだよな」
思いがけず、考えていたことと同じようなことを言われて、微妙に胸がすいた。
別に同調して盛り上がりたいわけじゃないけど、
「……世の中、頑張ったってしょうがないことだってあるよ」
つぶやくと、森川はきょとんとした。
「あ、でも俺、頑張ること自体は嫌いじゃない」
彫りが深い彼のあどけない表情は、なんだかひどく幼く見える。
「夢が叶うとまではいかなくてもさー、なんかいい方向にいきそうだし」
「いい方向?」
ホームに続く階段を下りながら隣を見上げると、森川は表情を崩した。