暴露 (秘密を知ってしまった・・・)

12

 怪しい取引を目撃した日の次の出勤日は、さすがに出勤が憂うつだった。
 週末はいろいろと考えた加世だった。
 加世が考えた次の行動の選択肢は3通りだった。このまま何もなかったかのように出勤して何もなかったかのように課長と接するのが1案。課長に直接会って話をするのが次の案。会社を退職するのが最後の選択だ。このうち退職する選択はどうしてもできなかった。せっかくこの就職不況のなかで就職できた会社である。
 かといって、課長の秘密を握ってしまったのである。何もしないわけにはいかない。
 その秘密の内容は、課長の人生を左右するようなものである。場合によっては会社を揺るがすこともありうる・・・。
 そう思うと、あらためて寒気が襲ってくる。とんでもないものを見てしまった。自分の好奇心がとんでもない事態を招いてしまったのだ。
 加世の妄想癖は、どんどんと悪い方向に想像をたくましくさせていく。
 実は、課長はある秘密結社と結びついていて、邪悪なことを企んでいるのではないか??
 実は、課長は某国のスパイで日本の防衛機密情報を盗むために暗躍している??
 実は、課長は・・・。
 秘密を知ってしまった私は、最終的には口封じのために消されてしまう・・・。消される方法は?交通事故?毒殺?
 課長から出された飲み物だけは口にしないようにしよう!!
 有効な対策も考えつかないまま、とりあえずは会社に出勤しながら相手の出方を待つことにした。

 加世が構えて出勤したにもかかわらず、その日は拍子抜けしたものだった。
 緊張した課長との対面も普段通りのあいさつのかけ合いで終わった。まるで何事もなかったかのように・・・。
 私に魔の手が襲ったということもなかった。
 ただ、気になることがあった。
 今まで感じたことのない視線を時々、感じるのだ。何か見られていると思って、顔を見回してもその視線の主が分からない。課長を見ても、机にかじりついていて私に視線を送っていたとは思えない。
 あのときの課長のレーザービームに匹敵するような熱い視線なのだ。勘違いではないはずだ。
 悪の結社が知らず知らずに私に包囲網を敷いているような、そんな薄気味悪さを感じてきた。
 (どうしよう・・・、1人では太刀打ちできないわ~)
 加世は太刀打ちするつもりなのか・・・。
< 12 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop