朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「……哲」
そっと玄関を出て、哲の部屋のドアを少し開けた。
「ごはん、食べちゃった?」
哲はちょうど、頭にタオルを巻いていた。
哲の使う機械も、汎用旋盤。
だけど、他の細かな機械も使えるし、扱う品物は硬いものばかりで。
髪が巻き込まれたら、絶対に死んじゃうから。
昨夜のピアスは耳から外れ、ネックレスも、バングルも、外されている。
赤い髪を許す、特異な社長と副社長に恵まれて、哲は至極真面目に、働く。
たまに、歌うけど。
「パスタ…いっぱい出来ちゃった、んだけど…食べる?」
ちょっと寂しくなったから2人分茹でた、なんて言えない。
哲は、少し怪訝な顔をしたけれどすぐに、揚げ茄子入ってるなら食べる、と唇の端を上げた。
「昨日の椎茸…とバターと唐辛子とお醤油」
「揚げ茄子ないの?」
「……ないのっ」
ああもう!腹立つ!
私の真似かよ!?
じわじわと笑いがこみ上げるじゃないか!