朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
細い道を挟んだ向かいにある、工場のシャッターを開けるのは副社長。
我が女社長の、娘婿。
旋盤は扱えないから、主に事務や経理をやっている。
名前は、なんだっけ。
いつも婿様、と呼んではいるけれど…且行さん、だったろうか。
「ねぇ哲、婿様の名前、なんだっけ」
シャッターの開く音に、私は洗った食器を拭きながら振り返った。
「…………」
え、なんで無視?
哲はテーブルを拭く手を止めて、真面目な顔で、ちらりと私を見上げた。
「…エ口ジジイ…だったかな」
…………。
…嘘だ!!
そんなわけあるか!
「いや…うちのジジイ共はみんなエロジジイか…」
何その、自分だけは違う、みたいな顔付き!
「俺、ジジイじゃねーし」
「エロは否定しないんだ!?」
「そこ、否定するほど枯れてねぇもん」
……哲…
婿様の名前、忘れたんだね…?