朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「…いっ…たぁぁ…」
階段3段分の勢いで突っ込んだ私の体は、哲にぶつかった事は確かだ。
多分、哲は反射的に受け止めてくれた。
抱きしめるように片手で私の頭をかかえ、もう片方の手で階段の手すりを掴んで、ひどく不安定な体勢で。
「馬鹿…蜜!痛いのは俺だ!」
「ごっ…ごめんなさい」
あんまりびっくりして、素直に謝った。
落ちる瞬間に見た哲の目と。
頭を抱えてくれてる力強さと。
この歳で、慣れた階段を踏み外す、自分とに。
「どこ痛くした」
はあぁ、と深く息をついた哲が、私の頭を離して、立たせてくれる。
「………蜜?」
茫然と、立たされるままに立ち尽くしたままの私に、哲の怪訝そうな声が、怪我したのか?と。
やたらと優しく、訊いた。