朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
腹立つ!
ほんと腹立つ!
階段踏み外した女を受け止めるとか!
しかも無傷とか!
頭ぎゅってするとか!
「萌え死んだらどうしてくれんのーッ!」
思い切り、叫んだ。
そうでもしないと、なんだかすごく怖い気がしたから。
見慣れたその手の大きさと、力強さとに、心臓が止まるかと思った。
哲が、男に見えたなんて。
認めない!
そんな訳ない!
哲は哲であって、断じて「男」なんかじゃないんだから!
いや、性別は男なんだけど!
「……馬鹿はお前だ」
ぺしんっ、と頭を叩かれて、ふてくされた顔で見上げれば、呆れた顔で笑う、哲。
「ほらみろ、蜜が叫ぶからエロジジイ出て来たじゃねーか」
顎の先で示された方を思わず見やれば、下の名を忘れ去られていることなど、全然知らないだろう婿様が、血相を変えて工場から飛び出してきたのが、見えた。