朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「まあ…いいか…」
発声練習すらできなかった婿様が、気を取り直したのか、真後ろを向いて空を見上げた哲の背中を、ばしん、と音がするほどに、叩いた。
「哲!この子に何かしただろう!」
え、ああ!
そうだ、私が大声を上げたから来てくれたんだっけ。
…なんで大声上げたんだっけ。
「なんもしねーっすよ」
「何もしないのに悲鳴が上がるか!」
婿様は、私を可愛がってくれる。
そりゃあもう、私がすでに成人している人間だとは思っていないかのように。
どうしてなのか、理由があるのかないのか解らないけれど、逆に甘えられない程に、甘やかしてくれる。
「哲…お前まさか…このささやかな胸を……!」
…………さ…ささやか?
ちらりと、哲に横目で見られたのが解った。
すぐに、空を見上げたのも。