朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「蜜、昼どうすんの?」
「あんまりお腹すかないから、ヨーグルトかなあ。コラーゲン入ってるやつ」
無事にベルトの交換が終わり、いつもの音で動き出した旋盤は、午前中いっぱいを使って、無事に下穴を開け終えた。
社長は、老人会のカラオケに出掛けていて、留守だ。
年齢こそ70を越えているが、元気は有り余っているようで、毎日どこかしらに出掛けている。
「食わないと持たないぞ」
「だって朝食べてから5時間もあいてないんだもん」
婿様は、工場の隣に建つ、立派な自宅に戻り、朝、奥様の作っておいたお昼を食べる。
シゲちゃんとまもちゃんは、お弁当。
私と哲は、部屋に帰るか、近所のラーメン屋さんに行くか、コンビニで何か買ってくるか…。
その時々で、違う。
「朝、食わせてもらったし。何か買ってきてやるわ」
頭からタオルを外し、赤い髪をかき回した哲は、食事のリズムが狂うことを、ことのほか、嫌う。
あ。
磯辺さんも、お弁当だったね。
あんまり喋らないもんだから、…つい。